(東日本大震災により被災した校舎建替のための企画提案)

生きる力を育む学校
【子どもたちの個性を引き出す】
新校舎内に複数のオープンスペースを設定し、その「場所」の使い方まで含め子どもたち自身が考える。これは、子どもたちによる「気づき・考え・実行する」の実践です。「放課後や休み時間の居場所」「遊び場」「様々な活動の場」など「場所づくり」のプロセスを通して様々なことを学び、さらに継続的に変化させて新しい場所をつくり続けることで子どもたちの創造性を高めることを意図しています。
オープンスペースは個別指導や合同学習、さらには子どもたちの個性を育む学習などに柔軟に対応できるスペースとしても活用することで、その「場所」の効果はより大きなものとなります。
【身近な自然から環境を考える】
新校舎の中心に中央広場(通り抜け)を設け、南と北に分断された運動場及び「学校の森」の連続性を確保します。中央広場を風が通り抜け 開放的な雰囲気をつくると同時に、移動の利便性および防犯の効果も期待できます。
周囲のそれぞれの森の中に子どもたちが自分たちで考えた「森の広場」を設定し、森から採れる材料を使って遊び場をつくります。定期的な間伐材の手入れにより出た材料を使い遊び場をつくり続けることで、持続的に森の環境を保全し、「環境」について考える場になると考えます。
【多様な学習形態への対応】
多様な学習形態に応じて移動可能な間仕切壁を設けることや、今日的課題(情報・食育等)に応じた設備の配置等、個々の対応を要する設計内容については、きめ細やかな対応を考慮いたします。
人と環境にやさしい学校
【環境計画】
校舎の室内環境については、子どもたちの健康や精神面などを考慮して、体にやさしい自然素材及び環境負荷の少ない再生可能な建築材料を採用すると共に、周囲の恵まれた自然環境を積極的に活用して、環境に配慮した「エコスクール」を目指します。
【環境教育】
学校教育における再生可能エネルギーの有効活用を推進するため、太陽光発電システムや最新の省エネルギー技術を積極的に取り入れた設計提案を行うと共に、それらの仕組みや原理が、環境学習の教材として子どもたちに体感できるようなエネルギー表示装置及び測定システムの導入についても検討を行います。
学校周辺の自然豊かな森に、学校施設と自然環境の中間領域として環境について考えるための「森の広場」を提案します。 (「生きる力を育む学校」参照)
地域と共生する学校
【学校から広がるコミュニティデザイン】
新校舎内に設けるオープンスペースは、地域活動などコミュニティの拠点としても利用が可能な場所として積極的に活用します。
森の広場は地域住民との交流拠点と位置付け、森の保全のための間伐や下草取り、子どもたちの遊び場づくりを通して、地域住民との積極的な活動に利用します。
【震災復興のランドマーク】
周囲の自然は「鎮守の森」として災害から命を守るというイメージそのものです。この森に囲まれた学校は「安心・安全の拠り所」として地域防災拠点の核であると同時に、「心のランドマーク」でもあります。その象徴としての新校舎のイメージは、周囲の自然との調和によって成り立つものと考えます。
【拠点機能を複合させ「地域の核」をつくる】
「学校」「地域コミュニティの拠点」「地域防災の拠点」という3つの機能を、学校周辺のまちづくり計画と対応させながら有効に複合させることで、平時においても災害時においても学校が「地域の核」となり、「心の拠り所」として地域住民との絆を、より深いものにすると考えます。
安全・安心な学校
【耐震計画】
新校舎の構造計画においては、構造規定の耐震性能に基づいた、より高いレベルを想定すると共に、安全性能を優先した耐震計画及び構造設計を行います。
今回の東日本大震災において被害の多かった非構造部材及び建築設備についても、最新の安全基準に基づいた、より安全性の高い設計を行います。
【安全・安心な居場所】
休み時間や放課後における安全で安心な学校内の「居場所」を創出するために、子どもたちの創造性を尊重した「場所づくり」を提案します。(「生きる力を育む学校」参照)
学校生活における子どもたちの安全・安心及び防犯に配慮した校舎の配置・平面計画を行います。